デビューCDとトランペットを手に、抱負を語る広瀬未来さん=神戸新聞社

デビューCDとトランペットを手に、抱負を語る広瀬未来さん=神戸新聞社

 神戸市東灘区出身で、ニューヨークで活躍しているジャズトランペット奏者広瀬未来さん(26)が4月20日、初のCDアルバムを発売する。19歳で単身渡米し本場で腕を磨いた若きジャズ奏者は作曲でも才能を発揮し、アルバム収録の8曲中7曲が自作曲。それらを3日から西宮、姫路、神戸で開く凱旋ライブで披露する。

 広瀬さんは甲南中学・高校(芦屋市)の部活動でジャズトランペットを始め、国内の賞を受けて渡米。食事にも事欠くほど苦労したが「常にベストを尽くすのがモットー」というひたむきな姿勢で演奏機会が増えていった。今は、国籍がばらばらなバンドのメンバー6人の中でリーダーを務めている。

 デビューCDは「ア・デイ・イン・ニューヨーク」。昨年12月、現地で録音した。以前はライブ用に作曲していたが、今回はスタジオ演奏を前提に曲を作ったという。「作曲で幅が広がった」との手応えを得て「次のアルバムも作りたい」と意欲を燃やす。

 米国滞在は延べ5年になるが、年に一度は帰国し関西を中心にライブを開いている。「ジャズの盛んな神戸に生まれたことは幸運だった。故郷で演奏すると初心を思い出せるんです」

 CDはタワーレコード、HMVなど主なレコード店やインターネット通信販売で予約可能。県内のライブは4月3日午後7時半、姫路市立町「ライラ」▽10日午後2時、西宮市高松町「プレラホール」▽16日午後7時半と同9時(入れ替え制)、神戸・元町商店街「萬屋宗兵衛」。

 問い合わせはジャズグラTEL06・6210・3313
(2010/03/26 神戸新聞)

撮影:甚田高穂

撮影:甚田高穂

 今から50年以上前のこと。梅田の堂山町に今もなお語り継がれる伝説のクラブがあった。

 その名はクラブ・アロー。

 連日連夜、華やかなステージが繰り広げられ、着飾ったカップルがダンスに興じるナイトクラブだった。

 いつかは自分も「クラブ・アロー」に出入りできるようになりたい。美しい恋人を連れて、夜遅くまで踊っていたい。

 多くの人がそう願ったが、その扉を開くことができるのは、ほんの一握りの人だった。普通のサラリーマンは、近づくのさえはばかられるような高級ナイトクラブなのだ。若者が気楽に利用できる今のクラブとは違い、そこは大人の、そして、大金を払える人だけが楽しめる特別な場所だ。

 しかし、だからこそ、クラブ・アローは夢の場所として君臨できたのだ。手に届かないところにあるから、皆が憧れ、天国のようにそこを仰ぎ見た。

 若い頃、クラブ・アローに毎夜、通った方が、こんな話をしてくれたことがある。

 「クラブの内装はゴージャスそのものでね、ここは日本か?と、聞きたいくらいだったよ。働いている女性達の美しさと言ったら、それはもう、正統派の美人ばかりでね。なぜみんなあんなに綺麗だったのだろう。当時は夜の迎賓館と呼ばれたものさ」

 彼はある実力者の秘書をしていたので、若いながらも、クラブ・アローへ出入りできたのだ。
 広々とした庭には一面、芝が張られ、滝が流れていたというのだから、それだけでも、クラブ・アローが別世界であると、わかるだろう。

 学生達の頃に、クラブ・アローでダンスパーティを開いたことがあるという方にも出会った。皆で手分けして大量のパーティ券を売り、ダンスパーティを開いたというのだ。夜の営業時間に利用するのが無理なお客さんのため、夕方、若者が使えるようにフロアを貸していたこともあったらしい。

 ゴージャスな空間として知られたクラブ・アローだが、何よりも誇れるのは、音楽の質の高さだった。

 天才ジャズピアニストの誉れ高い北野タダオが自分のオーケストラを結成し、専属バンドとしてスィングを奏でていた。さらに、招かれるゲストといったら、本物のスターばかり。あまりの豪華さに、「そっくりさんじゃないの?」と、質問したくなるほどのメンバーである。

 坂本スミ子やアイ・ジョージはもちろんのこと、アニタ・オディ、ジューン・クリスティ、オスカー・ピーターソン、クリス・コナー等々、そうそうたる名前が並ぶ。

 これでは高価な支払いを要求されても、仕方がない。

 豪華なゲストやゴージャスな雰囲気は、質の高い演奏があってこそだ。音楽博士とまで言われた北野タダオのピアノと編曲の才能が、クラブ・アローをクラブ・アローたらしめていたと言っていいだろう。

 梅田のクラブ・アローは残念なことに閉店し、今はもうない。けれども、「北野タダオ&アロージャズオーケストラ」は、その後も、活発な活動を続け、2004年には武庫之荘にライブスポット・アローというホームグラウンドを持つに至っている。(筆者註:ただし、現在は北野氏の引退に伴い、宗清洋氏が率いるアロージャズオーケストラと改名している)

 かつてクラブ・アローに通った方達に、「どんなところだったんですか?思い出を教えて」と、せがむと、多くの方が、一瞬、「ああ、クラブ・アローね」と、小さくあえぐようなため息をついた後、「滝があってね、音楽が流れるんだ。踊っても踊っても踊り足りないような、そんなクラブだったよ」と、少し体を揺らしながら、語り出す。

 彼らにとって、クラブ・アローはタイムマシンだ。皆、そのひと言をきっかけに、青春時代に舞い戻り、きらきらと輝く時間に出会うことができる。

 だからといって、クラブ・アローの音楽が懐メロになってしまったわけではない。アロージャズオーケストラは、今もなお前進を続けるビッグバンドなのだから。 

 人は誰でも、心の中に滝を持ちたいと願う。あくせくした日常を忘れ、水の飛沫を感じる時間が欲しくなるのだ。そんなとき、かつて伝説のクラブが、梅田にあったことを思い出すだけで、私は清々しさに浸ることができる。クラブ・アローは今も生きていると実感するのは、そんなときだ。

撮影:甚田高穂

撮影:甚田高穂

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何人ものトップ女性ジャズヴォーカリストを生んできた「神戸ジャズヴォーカルクイーンコンテスト」も今年で11回目となりました。

毎年100組以上の応募者があり、最近は海外からの応募者もあって、「国際都市~神戸」「ジャズの街~神戸」にふさわしい、国際的なコンテストとなっております。

応募者の中からテープによる予選で選ばれた10組が5月8日(土)に新開地KAVCホールで熱唱します。

今年はコンテストの模様を5月16日(日)にABC朝日放送ラジオで放送し、グランプリはジャズの本場アメリカでのライブハウス出演と富士通テンの協力により「プロモーションCD」の制作です。

イベントの詳細は、http://www.art-farmer.com/kjvqc/をご覧ください。

お問い合わせは、神戸市文化交流課 078-322-6598 です。
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神戸国際会館の開館50周年を機にスタートした「KOBE JAZZ FESTIVAL」も今年で6回目を迎えました。

サブタイトルは「リクエストで綴るジャズ・ヒットパレード」です。

リクエストは、ラジオ関西の「名曲ラジオ 三浦紘朗です」まで。

高校では日本1、2を争う高砂高校の「Big Friendly Jazz Orchestra」、

「楽しくなければジャズではない」と小曽根実クインテット、

ボーカルの第一人者伊藤君子さんらビッグネームが出演します。

5月30日(日)15:30~18:00 で入場料はS席 1,500円、A席 1,000円です。
場所は、神戸国際会館こくさいホールです。

お問い合わせ:神戸国際会館 078-231-8162

小曽根実

小曽根実


伊藤君子

伊藤君子


http://www.kih.co.jp/kokusai_hall/event_details.php?eventId=188

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関西を中心に活躍しているヴォーカリスト 宇根崎緑さんの2枚目のCDを紹介します。デビューアルバム「MIDORI」は、これぞジャズという器楽曲に歌詞をつけた曲を中心にして、バックのピアノトリオとご機嫌にスイングしています。まさに、「宇根崎緑の“ジャズ歌手宣言”」ともいうべきアルバムでした。2007年の録音ですから、あれから2年。今度は、ジャズのスタンダード曲に最近の曲を織り交ぜて。ピアノの宮下博行さんが、パートナーとしてアレンジし、サポートしています。

今回は、「宇根崎緑が捧げる愛の変遷かな」なんて勝手に思っています。ギターのハーブエリスの作った「Detour Ahead」が最初にゆっくりと静かに、そして丁寧に出てきます。この曲は、ビリーホリディとかビルエバンスなど多くのプレイヤーが演っているんですが、こんなにきれいな曲だったんだと再認識。「廻り道だけどこの道を進もうよ」という意味ですかね。最初のアルバムにも入っているので、宇根崎さんの好きな曲かもしれませんが、むしろこのアルバムを暗示するために出てきたような。ストレートに伸び伸びと唄ってくれているので何か勇気づけられているようです。そして、一転して宮下さんの軽やかなリズムに乗ってタイトル曲の「Falling In Love With Love」で、ここから愛の変遷へ。恋に恋したことはありますか?そして、「The Island」を挟んで、スタンダードの「As Long As I Live」「More Than You Know」等などへと進みます。宮下さんのピアノと掛け合いながら喜びや切なさを聴かせてくれます。バース(序曲)を途中にはさんでいるのは洒落ています。そして、「Do You Know What It Means To Miss New Orleans」です。「懐かしのニューオーリンズ」と訳されていますが、オーリンズ嬢のMissと「失う」のMissをかけているんですかね。レオンラッセルの曲でカーペンターズも唄っていた「This Masquerade」は個人的にすごく好きな曲なんです。直訳すると「仮面舞踏会」ですけど、「恋はひと時の騒ぎだ」と言っているのか「彼とは仮面をかぶっていた、もっと自分に素直だったらよかったのに」とも解釈できるんですが、小生は断然後者。唄う人は唄う人なりに解釈し、聴く人は聴く人なりに解釈していいんですよね。最後は「What It Means To Me」で、ちょっとどんなものなのか考えてみよう、と語りかけて終わります。

冒頭で、ピアノの宮下さんを「パートナー」と言いました。「エスコートして」というか「サポートして」というかなと思ったのですが、このアルバムを聴いてみると、やっぱり「パートナー」というのがぴったりのピアノを弾いてくれています。

宇根崎さんを初めて聞いたのはビッグバンドをバックにして堂々とパワー一杯に唄っていた時でした。今度のアルバムは、時には語りかけるように、時には喜びを一杯にあらわして、切なさを囁くようにとピアノだけとのコラボレーションで表現してくれました。パワーをぐっと抑えて。

購入は、こちら
(ジャズの街~神戸  安田英俊)

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 オンシアター自由劇場によるミュージカル「上海バンスキング」を僕が初めて観たのは1979年初演のそれが、初めて関西で上演された1981年のことだった。芦屋のルナホールで。

 スウィンギン・ジャズ・ミュージカル・ショーと銘打たれたそれは、「生バンドでつづる、黎明期のジャズマンたちの恋と夢。あの街には人を不幸にする夢が多すぎた」というキャッチコピーそのままに、吉田日出子のうたう昭和初期のジャズソングと、劇団員が特訓をして実際に演奏するジャズバンドの演奏が展開されながら物語が進行していく魅力的なものだった。

 2・26事件の直後、演出をも手がけた串田和美演ずるクラリネット奏者・波多野が吉田演ずるダンスホールオーナーの娘・まどかを連れて上海に渡り、トランペット奏者・バクマツらと共にジャズに打ち込みながら、波多野とマドンナ、バクマツと中国娘リリーとの恋や別れを織り込みながら、彼らが時代の流れに翻弄される物語は胸を打った。

その後神戸文化ホールで再演された時も観に行ったし、某有名女優主演で作られた映画にはがっかりさせられたが、その後、吉田はじめ、自由劇場の役者たちで改めて作られた映画の方はしっかり楽しんだ。

 物語や役者たちの演技はもちろんのこと、実際に演奏されるジャズがこのミュージカルの魅力を際立たせていた。

 開演直前に、客席の通路にずらっと居並んだ楽器を持った役者たちによる演奏が始まった瞬間、客席の誰もがこの魅力的で切ない物語に心を奪われた。芝居の幕が下りても、まだ夢の中にいるようだった僕たちは、舞台からホールのロビーに飛び出した出演者たちの演奏に見送られながら幸せな気分で帰途についたものだ。

 表面的な技術の水準よりも、役者たちの時代の人物たちになりきった芸の力が紡ぎ出した魔法のようなジャズソングの数々は、レコードにもなり、そこで聴けるそれらのうたたちも役者の余芸なんかではまったくない、本物のうただったのだ。

 戦前の日本のうたなんて、ポピュラーミュージックに馴染んだ耳には古臭いだけの歌じゃないかと思っていた馬鹿な若輩者だった僕はこれらの歌を聴いて頭を強く殴られたようなショックを受けた。

まだ、芸術と娯楽が未分化だった時代。理屈を言う前に、みんなが美しいジャズソングに誘われて踊りだした時代。そんな時代のジャズソングたちは、ロックやフォークの洗礼を受けていた僕たちの心をもしっかり捕らえたのだ。

 「上海バンスキング」の評判を受けてか、吉田日出子が歌のお手本にしたという、昭和初期のジャズシンガー・川畑文子らのレコードもLPで復刻され、それらをも買った僕たちは、時代の最先端を行くパンクロックと同じ土俵でこれらの歌に酔いしれた。

 「上海バンスキング」のレコードや、川畑文子たちのレコードは、今も僕の宝物で、時々ターンテーブルに乗せることになる。目を閉じると、あのめくるめく舞台の様子が浮かんで来る。

 最近、日本映画の力作を観て、感嘆することが多いのだが、その多くに、あの時観た「上海バンスキング」でバクマツを演じていた笹野高史さんと、リリーを演じていた余貴美子さんが出ていてうれしくなる。