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カヴァーがブームだ。たくさんのシンガーがカヴァー・アルバムを発表し、その多くがよく売れているという。自分の作った歌、持ち歌以外の歌を歌うことをカヴァーというのだけれど、実は事はそんな簡単なことではない。昨今の風潮では自分の持ち歌以外の歌を歌えば、なんでもカヴァーというようなことになっているけれど、そこに自分の個性、思い、革新的な冒険…などが込められていなければ、それは本当のカヴァーとはいえないんじゃないの…というのが僕の私見です。
僕の出自であるロックやフォークソングは、自作曲であることがそのアイデンティティーの大きな部分を占めているが、ジャズにおいては、自作曲とカヴァーの比率は1対9くらいかな…という気がする。ジャズ、特にヴォーカルを聴く醍醐味はカヴァーの魅力を味わうことなんじゃないかと思う。いわゆるスタンダード・ナンバーをその歌手がどのように歌うのか、ミュージシャンがどのように演奏するのか…そこに演者の個性、思い、革新性などがどんなふうに込められているか…そんなことを思いながらジャズ・ヴォーカルに耳を傾けるのは至福の時となる。
正木麻衣子さんの『そよろ』というアルバムを聴いた。麻衣子さんの歌は、僕がラジオ関西の『ジャズ・ライヴ・イン・ソネ』という番組をやらせていただいていたとき、ソネに出演したライヴを初めて聴いた。
『そよろ』は麻衣子さんが普段一緒にプレイしている宗清洋さん、河田健さん、宮哲之さんらと幅広いジャンルの曲をカヴァーしたものに加え、麻衣子さんの詞にMark Guarriniさんとあの北野タダオさんが曲をつけた2曲(アレンジは2曲とも北野さんだ)が収録されている。麻衣子さん作詞の2曲も素晴らしいのだけれど、10曲のカヴァー曲が泣きたくなるほど美しい。
服部良一先生の超名曲「胸の振り子」(雪村いずみさんの悶絶のカヴァーがある)、学生運動の敗北に重ねられることもあった西田佐知子さんの「アカシアの雨がやむとき」、熊本の民謡「おてもやん」(麻衣子さんの歌唱が思わず抱きしめたくなるほど~ご主人、ごめんなさい!チキンジョージでのライヴでは最高のPAお世話になりました♪~色っぽい)、僕もカラオケ(!)で時々歌う平野愛子の「港が見える丘」など、その選曲の妙味も含めてすべてが美しい。「ワークソング」だと思って聴いていたらいつの間にか平尾昌晃さんのヒット曲「星はなんでも知っている」もうれしい。僕も長年のつきあい、京都の老舗のライヴハウス・拾得のオーナー・テリーさんが訳し、敬愛する久保田麻琴さんが歌った「ラッキー・オールド・サン」も素晴らしい。そして、僕が15歳のときからあこがれ、一時、音楽を辞め、川崎で本屋さんをやっていたとき、そこへ会いにいき、40歳のときに再び歌い始め、今も最高に好きなシンガー・早川義夫さんの「サルビアの花」がもう本当に最高だ。いろんな人が歌う「サルビア」を聴いてきたけど、こんな美しい「サルビア」は早川さんご本人の歌唱以外では初めて聴いた。
これこそが日本のカヴァー・アルバムだ。
麻衣子さんのライヴが、ご主人がPAを務める神戸のライヴハウス・チキンジョージで開催される。
10月29日(土)午後7時の開演。その日は僕もぜひチキンの客になりたい。

本格的、主流派そして正統派と呼んでいるお気に入りのジャズボーカリスト森川奈菜美さんがCDを出しました。題して「OPEN SPACES」。「広く、自由な空間」というテーマでしょうか。大きな白いキャンパスに伸び伸びと唄で描いていく、そんなアルバムです。

本格的云々と言っているのは、素直に、丁寧に、スイングしてくれているからです。

最初の曲「With A Song In MY Heart」からそんな森川ワールド登場です。ミュージカルの曲でスーザンヘーワードが唄ってヒットし、スタンダードになった、というより最近の人にはスティビーワンダーが唄った、と言った方がいいんでしょうか。「心に響く唄のように貴方のことが心から離れない」といったラブバラードなんですが、「私の唄が貴方の心に届きますように」と聴く方に爽やかに語りかけてくれるように始まります。バースから丁寧に、そしてまさしくこのアルバムのパートナーであるフィリップストレンジさんのピアノが絡まるように、ソロではご機嫌にスイングして。ベースの荒玉哲郎さんとドラムのラリーマーシャルさんがそっと寄り添うようにリズムを刻んでくれます。

続いては、「I Fall In Love Too Easily」。性懲りもなく片思いに落ち込んだ恋の歌なんですが、彼が自分の元を去って行ってしまった失恋の唄として唄っているんではないかな、なんて考えながら聴いてしまいました。

そして一転、「All Of You」ではアップテンポで、小気味よく。森川さんのライブでは、ビルエバンスの曲をよく披露してくれます。「Turn Out The Stars」と後半では「Very Early」。いずれも軽快にスイングします。ビルエバンスは、作曲家としてもすぐれているんですね。いずれも唄いなれた感じで。

このアルバムの折り返し点と最後に意欲的な曲を入れてくれました。レコードでいえば、A面とB面の最後ですが、「The Man I Love」と「Infant Eyes」。いずれも軽快にスイングします。特に、「The Man I Love」にはびっくり。ビリーホリディとかエラフィッツジェラルドで聴いていてミディアムテンポで軽快に、と思っていたら、始まりは突然、ベースとドラムが表に出てきます。ロックのビートに乗せて、時折、4ビートになって、「私の彼は、いつ現れるんだろう。月曜日かな、火曜日かな、いや現れないかもしれない。」

途中で、ドラムソロを堪能。最後は、心の叫びをスキャットにして。とにかく圧倒される演奏、ゴキゲンな曲に仕上がっています。フィリップさんのアレンジかな。

アルバム最後の曲「Infant Eyes」は、テナーのウエインショーターの作曲に後から歌詞の付いた曲。静かに、そっと優しく、語りかけるように。抒情的なピアノをバックに、歌詞を語ってくれます。

録音は、2010年5月17日、18日で、大阪のKOKO PLAZA SUTADIO です。

入手方法は、森川奈菜美さんのホームページ(http://morikawananami.blog44.fc2.com/)にアクセスしてライブスケジュールを確認してライブに行くのがいのですが、全国のCDショップでも手に入れることができます。

(ジャズの街~神戸 安田英俊)

森川奈菜美さんの初CD「OPEN SPACES」

森川奈菜美さんの初CD「OPEN SPACES」

この「NEWS & TOPICS」のコーナーでもお知らせした「おやじジャズバンドコンテスト」。8月28日に開催されました。

このコンテストの上位入賞バンドが、神戸電鉄粟生(あお)線に乗り込み、ジャズを聴かせてくれます。六甲の夕暮れを車窓に見ながら約1時間半の旅です。

おやじジャズバンドは「御影ジャズランチクラブ」と「Kobe Swing Vets」の2つ、参加費は無料ですが、ハガキによる申し込みが必要です。

2011年11月3日(祝、木)、16時34分に新開地駅出発、志染駅折り返しで、18時53分新開地駅到着。定員は150名、ハガキ1枚で5名まで申し込み可能。

申し込みは、〒652-0032 神戸市兵庫区荒田町1丁目20-2 神鉄コミュニケーションズ「おやじジャズトレイン」係(電話:078-521-0321)

締め切りは2011年10月11日。

JAZZ  X  TRAIN 出発進行です。

(ジャズの街~神戸 安田英俊)

「おやじジャズトレイン運行」参加者募集

「おやじジャズトレイン運行」参加者募集