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海を渡った浮世絵 江戸のポップカルチャー

2008年1月14日掲載

歌川貞秀 新板早替両面化物

遊べるおもちゃ絵

歌川貞秀 新板早替両面化物(ねずみの化物ほか)

歌川貞秀「新板早替両面化物(ねずみの化物ほか)」(1837―43年) (c)V&A Images/Victoria and Albert Museum

 「おもちゃ絵」。聞き慣れない言葉だが、浮世絵には、そんな風に呼ばれる、使って遊べる版画があった。すごろくなどゲーム仕立ての絵もあれば、切り抜いて組み立てるものなど多種多彩だ。

 庶民に愛された浮世絵は、江戸のポップなビジュアル文化の代表。「役者絵」「美人画」など、ブロマイドやポスター代わりに目で楽しむものが中心だが、おもちゃ絵は、まさに子どもらの毎日を豊かに彩った実用的な「娯楽品」だった。

 この「両面化物」と題されたシリーズは、「両面絵」と呼ばれたおもちゃ絵の一種。大きさは、ほぼ現代のB4判。左右対称の形に描かれた人や物を切り抜き、両面を裏表に張り合わせ、人形代わりに楽しんだ。

 ナマズのお化けや「文福茶釜」を前後から描き分けたり、妖術使いを裏返すと、ネズミのお化けに変じたり…。機知とユーモア、遊び心にあふれる実に愉快な作品だ。

 手首やナマズに、翼や手足を生やすなど、独特の擬人化は、シュールかつコミカル。この作品も「浮世絵はマンガの原点」との意見を後押しするだろう。

 おもちゃ絵は、実際に遊びに使われた消耗品ゆえ、現代まで残る作品が多くないが、本作は刷り上がった完成品でなく「版下絵」。これを元に版木に彫られ印刷された。

 こうしたユニークな下絵や画稿類を数多く所蔵しているのもまた、英ヴィクトリア&アルバート美術館が誇る浮世絵コレクションの特長の一つなのである。

 特別展「ヴィクトリア アンド アルバート美術館所蔵 浮世絵名品展」は12日、神戸市立博物館(神戸市中央区京町24、TEL078・391・0035)で開幕。2008年2月17日まで。

(2008年1月14日付 神戸新聞から)

※この記事は過去に神戸新聞に掲載されたものです。
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