神戸新聞
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社寺巡礼

2007年12月24日掲載

難工事を後世に伝える 久谷八幡神社

新温泉町久谷

朝鮮半島出身者の名前も書かれた招魂碑。奥に山陰線の線路が見える=新温泉町久谷

朝鮮半島出身者の名前も書かれた招魂碑。奥に山陰線の線路が見える=新温泉町久谷

 架け替え工事が始まっている香美町香住区のJR余部鉄橋。たもとの余部駅を出発した浜坂方面行きの列車は、間もなく山陰線で最も長い桃観トンネル(一九九一メートル)に吸い込まれる。出口の二百メートルほど先にあるのは、駅前に民家が一軒もない久谷駅。久谷八幡神社は、無人の改札を抜けて徒歩十分ほどの国道178号沿いにある。

 一四一四年に近くの山から移されたとされる神社の境内は、北向きの斜面に面し、広葉樹林に覆われてうっそうとした雰囲気。そこで存在感を示しているのが「鉄(鐵)道工事中 職斃病没者 招魂碑」と彫られた高さ三メートルを超える石碑だ。

 碑には、余部鉄橋と桃観トンネルの建設という二つの難工事を含めて近辺の山陰線の敷設工事中、事故や病気で亡くなった二十七人の出身地と名前が刻まれている。播磨、但馬、安芸といった県内外の地名が目にとまる中で「朝鮮」の文字もあり、七人が朝鮮半島出身だったことが分かる。

 建立は香住―浜坂間の開通を翌年に控えた一九一一(明治四十四)年十月で、工事業者らが寄進したとされる。こけむした姿が歴史を感じさせ「永欲慰英霊者也」といった碑文から先人の思いをくみ取ることができる。

 郷土史に詳しい浜坂先人記念館「以命亭」の岡部良一館長(60)らによると、桃観トンネルは予期せぬ出水が発生するなど山陰線屈指の難工事だったといい、宮総代の株本順夫さん(79)は「久谷に労働者の宿舎があった縁で、この地に招魂碑があるのだろう」と話す。開通が朝鮮半島出身の労働者に支えられていたことを忘れないため、日本人と並んで名前が刻まれたと地元では伝えられている。

 新温泉町内には、朝鮮半島出身の労働者によって寄進されたレンガ塀がある西光寺など、当時の歴史をしのぶ建造物がほかにもあり、阪神間などから訪れるグループが近年増えてきている。(記事・写真 井原尚基)
メモ
 ★地元の中高生が毎年9月15日に境内で奉納する「久谷ざんざか踊り」は県無形民俗文化財に指定されている
 ★浜坂先人記念館「以命亭」TEL0796・82・4490

【アクセス】 JR山陰線久谷駅下車徒歩10分。余部鉄橋から車で7分

※この記事は過去に神戸新聞に掲載されたものです。
内容については変更になっている場合がありますので、おでかけの際はあらかじめご確認ください。

難工事を後世に伝える 久谷八幡神社(2007-12-24)