神戸新聞
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社寺巡礼

2008年5月12日掲載

なぜか人を引きつける 求福教寺

相生市矢野町三濃山

静寂に包まれた森の中にたたずむ本堂=相生市矢野町三濃山

静寂に包まれた森の中にたたずむ本堂=相生市矢野町三濃山

 新緑が風でこすれ、足元で枯れ葉が鳴る。頂上に近づくにつれ、森が明るくなってきた。赤土に埋もれかけた石段を登ると、一気に視界が開けた。銅板葺(ふ)きの本堂が、小さな二つの社を従えるように待っていた。

 相生市矢野町瓜生の集落から鍛冶屋川(かじやがわ)の渓谷沿いに二時間弱。求福教寺(ぐふくきょうじ)は標高五〇八・六メートルの三濃山山頂近くにある。九世紀に空海が開山したという説や、聖徳太子の重臣で、渡来人の秦河勝(はたかわかつ)の子孫である秦造内麻呂(はたのみやつこうちまろ)が建立したなどの諸説が伝わる。

 源平の争乱で焼け落ちるまで、真言の聖地として信仰を集め、「三濃千軒」と称されるほど栄えたとか。だが、三十数年前に人が去り、村は竹やぶにのまれた。

 寺も荒れた。本堂のかやぶき屋根は傾き、脇の弁財天社や、河勝を祭る大避神社も屋根がはためくほど無残な姿だったという。

 現在の建物は、窮状に心を痛めた近くの住民や会社経営者が約三十年前から数年かけて私財で整備した。

 以来、近くの人らが毎月十八日に登山し、清掃している。メンバーの一人、前川博文さん(71)=上郡町金出地=は「理由は説明でけんが、昔から寺があったように、この山には人を引きつけるもんがあるんやないかな」という。

 本堂の裏を抜け、経納山(きょうのうさん)の別名がある山頂に向かった。瀬戸内海を一望できる場所に、ご神木のアカガシが枝を広げる。樹齢は数百年。朽ちかけているが、新たに根を伸ばそうとしている。そんな生命力に胸を打たれ、前川さんたちとは別のグループが保護に取り組む。

 足元の看板に、この老木のつぶやきが記されてあった。

 「終わりに近いことは悟っている。でも、あきらめない。みんなが忘れずにいる限り」(中西幸大)
メモ
 ★秦河勝が愛用したという説とともに、寺に伝わっていた「文福茶釜」が相生市歴史民俗資料館(TEL0791・23・2961)に。

 ★相生市教育委員会文化財係TEL0791・23・5151

【アクセス】 JR相生駅から神姫バスで瓜生東か瓜生で下車。登山道を歩き、約1時間半。

※この記事は過去に神戸新聞に掲載されたものです。
内容については変更になっている場合がありますので、おでかけの際はあらかじめご確認ください。

なぜか人を引きつける 求福教寺(2008-05-12)