神戸新聞
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社寺巡礼

2008年9月22日掲載

引き寄せられる異空間 伽耶院

三木市志染町大谷

入山料は草引き10本。住職の温かさを慕い、年間を通じて多くの人が訪れる=三木市志染町大谷

入山料は草引き10本。住職の温かさを慕い、年間を通じて多くの人が訪れる=三木市志染町大谷

 春はシダレザクラ、夏はホタル、秋はモミジ、冬はヒカリモ…。三木に赴任して以来、何度訪れたことだろう。森に囲まれた広い境内に足を踏み入れるたび、初めて来たような不思議な感覚にとらわれる。澄み切っていて、何か、この世でない空間に引き寄せられたかのような―。

 創建に、幻想的な逸話がある。七世紀半ば、法道仙人が、加古川の水面に毘沙門天(びしゃもんてん)を表す梵字(ぼんじ)を見つけ、流れる先をたどると、光り輝く谷に毘沙門天像がおわしたのだという。近くにお堂を建て、像をまつった。

 寺は大いに栄え、平安時代には、百数十の建物が並んだ。室町以降は、天台宗系の修験道場として京都・聖護院に次ぐ格式を与えられるまでになったという。

 しかし安土桃山時代、三木合戦で羽柴秀吉の焼き打ちに遭い、江戸期にも失火で全焼。後に再建されたが、明治初期には住職がいなくなり荒れた。

 本格的な再興は、大正末ごろから。現住職岡本孝道さん(73)もここ二十年余り、歴史的建造物を改修するための寄付金集めに奔走し、昨年度でようやく一段落させた。

 現存の建物は主に十七世紀の築造で、金堂と多宝塔など三つと毘沙門天像が、国の重要文化財。行事も、境内に七百の灯籠(とうろう)と六千のろうそくを並べる万灯会、二百数十人の山伏が集まる採灯大護摩と多彩だ。

 豊かな自然、劇的な歴史、神秘的な儀式がつむぐ異空間。

 「この世でないみたい? 住む者には分かりません。入山料は草引き十本。理由はどうあれ、参拝してもらえるのは何よりうれしい」。住職の穏やかな口調は、ありがたいお経のよう。結局、繰り返し引き寄せられる一番の理由かもしれない。
(佐伯竜一)
メモ
 ★新西国霊場第26番札所。催しがないときも、地蔵を並べて帽子をかぶせる人、古い人形を持ち寄る人の姿が多い。

 ★伽耶院 TEL0794・87・3906

 〈アクセス〉 山陽道三木東インターから車で約3分。神姫バス伽耶院口から徒歩約10分。

※この記事は過去に神戸新聞に掲載されたものです。
内容については変更になっている場合がありますので、おでかけの際はあらかじめご確認ください。

引き寄せられる異空間 伽耶院(2008-09-22)