神戸新聞
過去の連載・特集記事一覧へ ニュースサイトへ 読者クラブサイトへ

社寺巡礼107

2009年11月26日掲載

但馬唯一の春日曼荼羅  西光寺

豊岡市田結

但馬唯一という「春日曼荼羅」。豊かな色彩を使い、「神仏習合」の思想が精緻に描かれている=豊岡市田結、西光寺

但馬唯一という「春日曼荼羅」。豊かな色彩を使い、「神仏習合」の思想が精緻に描かれている=豊岡市田結、西光寺

 円山川河口にほど近い小さな集落に入り、細い道を少し進むと、寺の名を彫った石柱が現れた。里山に抱かれるように、本堂と庫裏がひっそりと立っている。

 この寺には豊岡市指定文化財の「春日曼荼羅」がある。県や市町が指定した但馬の文化財で、同様の曼荼羅は唯一という。曼荼羅は、仏の悟りの境地を絵画的に表現した宗教画。信仰対象ではないため、普段は庫裏で保管している。日野西真応住職(58)にお願いして見せてもらった。

 神仏習合の思想が表れた絵図(縦約92センチ、横約33センチ)で、奈良の春日大社と興福寺が描かれている。上半分は春日大社を俯(ふ)瞰(かん)して描き、下半分の興福寺は、諸堂の代わりに安置された仏像を描くことで境内の様子を表している。西光寺によると、鎌倉から室町時代に制作されたとみられるが、同寺に持ち込まれた経緯は分からない。

 日野西住職は「本当の仏像に比べて表情が豊かなんです。人間味があり、柔らか。描き手の思いが表れているのでは」と話す。拡大鏡で見ると、ほほえんでいるようであったり、隣の仏像に優しいまなざしを向けていたりする。梅や桜、山の緑の色使いも印象的だ。

 曼荼羅を鑑賞した後、住職に寺の周辺を案内してもらった。近くの農地約20ヘクタールは休耕田だが、昨年春に放鳥コウノトリが飛来したことを機に餌場としての整備が始まった。東京大学大学院の研究室が調査に入るなど、里山の豊かな植生が注目を集めている。境内に戻ると、但馬タムラソウやツリフネソウなど、その里山から移植した山野草が迎えてくれた。

 緑豊かな里山と、精緻でありながら優しい筆遣いが印象的な曼荼羅図。その両方に心癒やされ、得した気分になった。(宮下裕史)
メモ
★高野山真言宗の寺院。そばには1925年の北但大震災の震源近くだったことを示す碑もある。「春日曼荼羅」の鑑賞希望者は予約が必要。西光寺TEL0796・28・2012
<アクセス>JR城崎温泉駅からタクシーで約15分。

※この記事は過去に神戸新聞に掲載されたものです。
内容については変更になっている場合がありますので、おでかけの際はあらかじめご確認ください。

但馬唯一の春日曼荼羅  西光寺(2009-11-26)