神戸新聞
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<但馬の説話 探訪>

河畔に参詣絶えず 鼻かけ地蔵

城崎町楽々浦

ほこらに足を踏み入れると、大きな地蔵がたたずむ=城崎町楽々浦

ほこらに足を踏み入れると、大きな地蔵がたたずむ=城崎町楽々浦

 城崎温泉の川向かい。ここ、楽々浦(ささうら)湾のほとりにタモの木があって、下には地蔵がまつられている。古びていて大きなものだが、鼻のあたりが壊れており、つけられた名は「鼻かけ地蔵」。「願いを一つだけ聞いてくれる」地蔵だとか。

 昔、楽々浦に住む貧しい漁師、喜助の夢まくらに地蔵が立った。「ある年の大水で川底にさらわれた。ここは冷たくて暗いから、助けておくれ」。次の日、漁に出かけると、夢の通り地蔵がかかったので、引き揚げて道端に丁寧にまつった。

 すると、地蔵の鼻から米粒がポロポロ落ちてくるではないか。どんどん出て、喜助は近所に分け与えるほど裕福に。だが、そこで欲を出したのがいけなかった。「鼻の穴を大きくしたらもっと出るのでは」。のみでたたいた拍子に鼻がそげ、米は二度と出なくなった。

 喜助は再び舟に乗って網を打った。反省して毎日地蔵にお参りをし、ただ「心豊かに生きられますように」と祈った。やがて、嫁をもらい、貧しいながらも幸せに暮らしたという。

 楽々浦の和田常市さん(66)が子どものころからすでに地蔵はあったが、一九八六年にほこらを改築して以来、地区をあげて地蔵祭を開き護摩供養などをするようになった。のちにテレビアニメに取り上げられ一躍有名に。以来、十七戸で開く六月のまつりに五、六百人もの人が詰めかける。

 “欲張り損”のいましめを越え、今や「首から上の病に効く」とか「女の子が授かる」など言い伝えはさまざま。静かな河畔には、今日もお参りが絶えない。(幾野慶子)