神戸新聞
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<但馬の説話 探訪>

「赤石の者」襲わず かっぱの恩返し

豊岡市赤石

かっぱが子どもを引っ張る絵の看板が立つ=豊岡市赤石

かっぱが子どもを引っ張る絵の看板が立つ=豊岡市赤石

 豊岡市赤石の玄武洞のすぐそば。道路脇にひっそりと立つ地蔵がある。明治時代に近くの川でおぼれた子どもをまつったものだという。

 そこでは昔から、かっぱが出て子どもを引っ張るという言い伝えがあり、時々子どもがおぼれていた。

 ある時、おじいさんが玄武洞近くの畑で草取りをしていると、子どもが近づいてきた。ところが頭に皿があり、かっぱが化けたのだと分かった。水浴びをしようとしつこく誘ってくる。おじいさんはかっぱのすきを見て捕まえてしまった。「これまでたくさんの子どもを川へ引っ張ったな。もう許さんぞ」

 「助けて」。かっぱは、命ごいに必死になった。川へ入るときに「赤石の者だぞ」と言ったら引っ張らないと約束し、毎日、魚を届けることも申し出た。

 おじいさんは、かわいそうになってかっぱを逃してやった。それから毎日、玄関の木の鍵に魚が掛けられるようになった。しかし鍵を鉄に替えると、ぱったり途絶えてしまった。

 近くに住む小川京一さん(77)は子どものころ、川へ入るときは「赤石の者だぞ」と大きな声で言いながら飛びこんだという。「七月三十日の川下祭りの日、普通は川へ入ってはいけないが、赤石の者は入れるんだと親から聞かされた」と笑う。

 今、かっぱがいたといわれる場所の近くには、川の近くで遊ばないよう呼びかける看板が立つ。そこには、かっぱが子どもを引っ張ろうとしている絵があった。

 風を受け、水面が静かに波立っていた。(森 信弘)