神戸新聞
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<但馬の説話 探訪>

働き者を助けた観音様 天に還(かえ)った馬

和田山町宮

圓明寺に移された観音様。観音堂の中で黄金に輝く=和田山町宮

圓明寺に移された観音様。観音堂の中で黄金に輝く=和田山町宮

 和田山町宮には、かつて杢兵衛(もくべえ)という木こりがいた。病気で長い間寝たきりのおばばと二人暮らしだった。

 杢兵衛は毎朝、仏壇や山の観音様にお願いをした。山に出掛けては、木に優しく語りかけながら、一本一本切っていった。
 そんなある日、山で白い馬に出合った。日光を背に、たてがみを銀色に光らせていた。

 以来、杢兵衛の家では不思議なことが続いた。おばばの病気が治り、突然、小判が手に入った。杢兵衛は馬を買おうと、いっそう山仕事に励むようになった。

 数日後、杢兵衛は再び、あの馬に出合った。あまりの美しさに引き寄せられて、歩いてついていくと、立派な木々の生い茂る森に出た。

 杢兵衛はそこから毎日木を切り続け、馬が家まで運んだ。杢兵衛は村一番の長者になった。

 それから、幸せな生活が始まった。立派なお屋敷においしいごちそう、うまい酒。杢兵衛は仏
壇の観音様の前でふんぞり返り、働かなくなった。

 あの馬はそっと小屋を抜け出し、谷沿いの道をとぼとぼと上った。「あっ、杢兵衛んとこの馬だ」。追いかける村人。

 すると、馬は夕焼けに染まり、金色に輝いた。「観音様だ」。村人は一斉に足を止め、地面にひれ伏した。

 馬は大岩に駆け上り、そのまま観音堂に消えて、二度と帰ってくることはなかった。杢兵衛とおばばはみじめな暮らしに落ちてしまった。

 観音堂は現在、近くの圓明寺に移され、地元住民の信仰を集めているという。(大島光貴)
=おわり=